全日本港湾労働組合関西地方大阪支部。よくある質問をまとめました。

よくある質問

今まで事務局にいただいたよくあるご質問内容をまとめております。
わからないことやお悩みのことは一度こちらをご参考ください。

賃金の支払方法-一定期日払の原則

私の会社は、毎月20日締めの当月25日が給料日でしたが、先月は月末になり、さらに今月は、社長から「資金繰りがつかないので、来月10日に支払う」と言われました。社長は給料日を勝手に変更できるのでしょうか。

法律上、社長が勝手に給料日を変えることはできません。労働基準法24条2項は「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めており、会社は定められた期日に給料を支払う義務があります。会社がこれに違反した場合、罰則があります(同法120条1号)。

退職金の本人以外の受取りや相殺の問題

私は、同僚から退職金で返すと言われて100万円を貸しました。私は、同僚の退職金を会社から直接受け取ることができるでしょうか。

あなたが、同僚の退職金を会社から直接受け取ることはできません。これは、賃金や退職金は直接労働者に支払わなければならないからです(直接払の原則。労基法24条1項)。これに違反した使用者には罰金が課せられます(労基法120条1号)。

私は、会社から100万円を借りていますが、退職したい旨を伝えたところ、「退職金と借入金を相殺してかまわない」という書面に署名捺印を求められました。私は、これに応じなければならないでしょうか。

会社の要求に応ずる必要はありません。会社に対し、退職金全額の支払いを求めることができます。これは、賃金や退職金は労働者に全額支払わなければならないからです(全額払の原則。労基法24条1項)。一方的に相殺した使用者には罰金が課せられます(労基法120条1号)。ただし、労働者の自由な意思に基づく同意があれば相殺も許されます。

調整的相殺の問題

会社での給料のことで、1月分の給与が計算ミスにより5万円払いすぎになっていたため、2月分の給与から5万円差し引くと言われました。返さなくてはならないのはわかるのですが、一度に5万円も差し引かれてしまうと、手元に残る給与がわずかになり、生活に困ってしまいます。会社はこのような差引きができるのでしょうか?

会社は、原則として、賃金を全額払わなくてはならず(労基法24条1項)、賃金からの控除・相殺をすることはできません(賃金全額払いの原則)。

しかし、法律上、社会保険料等の控除や労使協定による組合費の控除は認められています。さらに判例は、賃金過払いの場合にこれを清算する調整的な相殺も一定限度で許されるとしています(福島県教組事件・最高裁判決S44.12.18)。ご質問のケースはこれに該当しますが、相殺が許される場合にあたるかどうかは、個々の事案ごとに判断されます。

上記最高裁判例によると、相殺の時期、方法、金額などからみて労働者の経済生活の安定を害さないかどうか、すなわち、過払いのあった時期と賃金の清算・調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期になされ、あらかじめ労働者に予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要するに「労働者の経済生活の安定を脅かすおそれ」があるかどうかがその判断基準になります。

この基準を満たさない差引きは許されないことになります。

賞与支給日在籍要件の問題

私が勤めていた会社では、7月第2金曜日に夏期賞与が支給されることになっていますが、支給日に会社に在籍していることが支給要件とされています。6月末に定年退職した私は、まったく夏期賞与をもらうことができないのでしょうか。

結論から言うと難しいと考えられます。
賞与支給日在籍要件が有効だとすると、賞与支給日より前に退職していた労働者には受給権がないということになります。判例は、一般的には、在籍要件を有効と考える傾向にあります(判例:大和銀行事件最判S57.10.7、コープこうべ事件神戸地判H15.2.12)。

私が勤めていた会社は、給与規定で賞与支給日は6月25日とされており、この日に在籍する従業員には夏期賞与が支給される予定でした。私は6月末に退職したのですが、賞与支給日が会社の都合で1か月遅れ、7月25日になってしまいました。私は、夏期賞与を受け取ることができないのでしょうか。

賞与支給日である6月25日に在籍することが支給要件となっている以上、その日にはまだ在籍していたのですから、賞与の受給権があると考えられます。

会社都合退職か自己都合退職か

勤務していた事業場から遠方の事業場への転勤命令を拒否したところ、就業規則に基づく転勤義務違反であるとして、自己都合を理由とする退職届を提出させられました。ところが就業規則に基づく転勤義務というものはないことがわかりました。この場合、会社都合による退職金を請求できるでしょうか。

退職金の支給額は、就業規則や退職金規定などにより、自己都合の場合より会社都合の場合のほうが多いのが一般的です。そこで、自己都合退職か会社都合退職かをどのように判断するかが問題となります。
期間の定めのない労働契約においては、労働者は2週間の予告期間をおけば、いつでも、理由を要せず、契約を解約できます(民法627条1項)。労働者が自己の都合で退職した場合はたしかに自己都合による退職金となります。
しかし、形式は自己都合による退職であっても、実際は会社から退職を強要された、あるいは会社から虚偽の事実を告げられ退職しなければならないと誤信して退職届を出したという場合があり、このような場合も自己都合退職としてよいか、あるいは会社都合退職とみるべきかという問題があります。
基本的には、退職に至る事情が労働者側にあったのか会社側にあったのかによりますが、経営上の理由による労働条件の大きな変更によりやむなく退職に至った場合、会社の強迫によりやむなく退職に至った場合、あるいは会社が重要な事実について虚偽を告げそれを信じて退職した場合などは、会社都合退職とみるべきです。
ご質問の場合、就業規則によって転勤義務が発生しないとわかったうえで、自己都合を理由とする退職届を出したのであれば、退職金は自己都合によるものになると考えられます。
しかし、会社の説明により転勤義務があると誤信し、転勤義務に違反したのだから退職せざるを得ないと思いこんで、退職届を出したのであれば、会社都合による退職金を請求することが可能となります。
なお、強迫により、あるいは、虚偽を告げられそれを信じて退職の意思表示をした場合は、退職の意思表示そのものを取り消し、あるいは、その無効を主張できる場合があります。

残業の義務

私はある会社に勤めているのですが、就職の時には、午前9時に出社し、正午から午後1時はお昼休み、午後6時に退社という条件でした。ところが、毎日のように残業を要求されて困っています。残業は断れないものなのでしょうか?

残業命令に従う義務があるかどうかは、個々の労働契約で決まります。まずは労働条件明示書(労働基準法15条1項、同規則5条)、就業規則、労使協定を確認してください。
労働契約で定められた労働時間を所定労働時間と言います。就業規則等に定めがなければ、所定外労働時間つまり残業は基本的には断ることができます。
ただし、①いわゆる36協定の締結、届出があり(残業が労基法32条所定の労働時間の範囲を超える場合)、②就業規則に残業義務についての定めがあり、③その就業規則の規定内容が合理的である場合には残業義務が生じるとした判例があります。
合理性の有無は、時間外労働をさせる必要のある具体的事由、業務の種類、労働者の数、延長すべき時間などの諸事情を勘案して決することになります。
従って、このような条件を満たしている場合には原則として残業を断れないこととなります。

残業代

私の会社では、就業規則で1日の労働時間が7時間と定められていますが、残業代についてどのように計算されるのでしょうか?

法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間です(労働基準法32条)。
よって、1日の労働時間が就業規則で定められている7時間を超えても法定労働時間(8時間)を超えない残業の場合(法定内残業)には、法定内残業に対する残業代として、割増のない通常の賃金が支払われます。
これに対し、法定労働時間を超える残業がなされた場合には、その法定労働時間を超える分について、会社は、通常の労働時間の賃金のほか、割増賃金を支払う義務があります。
割増率は、法定労働時間を超えた場合(時間外労働)は25%以上、法定の休日に労働をした場合は35%以上、深夜労働(午後10時から午前5時まで)をした場合は25%以上となります(労基法37条、「労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」平成6年1月4日政令第5号)。
また、時間外労働が深夜労働に及ぶ場合には、合計した割増率である50%以上、休日労働が深夜労働に及ぶ場合には60%以上となります。
もっとも、休日労働が法定労働時間の8時間を超えても、休日労働の35%の割増率があるだけで、時間外労働の25%は加算しなくてよい扱いとなっております(昭和22年11月21日労働基準局長通達366号)。

退職金

私は、長年勤務していた会社をこのたび自主退職することにしました。これまで私の会社では、退職金の支給はおこなわれていたはずなのですが、会社は、私に対して、「退職金は支給できない」と言ってきました。このような会社の対応は許されるのでしょうか。

退職金は、法律上、使用者に支払いが義務付けられているものではありません。しかしながら、就業規則、労働契約、労働協約などで、退職金を支給することやその支給条件が定められている場合には、使用者は退職金を支給しなければなりません(昭和22年9月13日次官通達17号)。
したがって、あなたの会社でも、就業規則、労働契約、労働協約などで、退職金を支給することやその支給条件が定められており、それにしたがってこれまで退職金の支給がおこなわれてきた場合には、あなたにも退職金を支給しなければならず、会社が一方的に退職金支給を止めることはできません。
また、上記就業規則等によって退職金を支給することや支給条件が定められた場合、労働基準法第11条の「賃金」の扱いを受けます。
また、あなたの会社の就業規則等に退職金の定めがない場合であっても、これまで退職金の支給が、共通の支給基準に基づいて相当期間にわたり継続しておこなわれてきたような場合には、退職金を支給する旨の労使慣行が成立していると評価できる可能性があります。
このように退職金支給の労使慣行が成立している場合には、会社は相当な理由なく一方的に退職金支給を打ち切ることはできません。
なぜ会社があなたに「退職金を支給しない」と言ってきているのか、一度きちんとした説明を会社に求める必要があるでしょう。

セクシュアル・ハラスメント

私の勤務先は、小さな会社で、昼間は男性社員が営業等で外出してしまうため、社長と二人きりになることが多いのですが、社長から、一緒に作業をおこなう際に倒れかかったふりをして抱きつく等の行為をされたり、生理のことを話題にされたりして、非常に不快な思いをしました。また何度も飲みに誘われ、断りきれずに同行したときにも、性的な話題をされました。
私は、このような社長の態度は許されないと思い、社長に対して事務的な態度で接するようにし、社長の性的な嫌がらせに対して拒絶の意思を明らかにするようにしました。
すると、社長は、些細なことで私を怒鳴るようになり、挙句には、突然解雇を告げられてしまいました。
私は、真面目に勤務をしてきたのに、このような解雇は私が社長に拒絶の態度を表明したことの報復と思え、とても納得できません。
私はどうしたらよいのでしょうか。

これはいわゆるセクシュアル・ハラスメント(以下、「セクハラ」という)の問題です。セクハラには、対価型と環境型とがあり、前者は、本人の意に反する使用者や上司の性的な言動に対する本人の対応によって、その本人を解雇、降格、減給等の不利益な扱いをする場合をいいます。後者は、本人の意に反する使用者、上司や同僚等の性的な言動によって、本人にとっての職場環境を悪化させる場合をいいます。本件は、社長の性的言動に対して拒否の態度を示したところ、解雇されたという事案ですので、前者の対価型にあたります。
そしてこのような解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に該当し、無効といえるでしょう(労働契約法16条)。したがって、職場に戻りたいという気持ちがあるのならば、解雇無効を主張し、職場に復帰する方向で考えることもできます。
また、職場への復帰の有無を問わず、社長に対し、以下のような損害賠償請求をすることが考えられます。
まず、社長の違法な解雇により、結果的に会社で勤務を続けることができなくなったのであるから、かかる社長の行為は不法行為を構成し、損害賠償請求(民法709条)をすることが考えられるでしょう。
また、社長の性的な言動自体、あなたの人格権を侵害する不法行為を構成するといえるので、その点についても損害賠償請求(民法709条)をすることが考えられます。

過労死について

私の夫は、毎日長時間労働に従事していましたが、突然、心筋梗塞で亡くなってしまいました。過労死が労災と認定されるためには、時間外労働の長さが大きく影響すると聞きましたが、タイムカードを押した後もやむをえず残業していた場合や、残業中に食事や仮眠をとっていた場合には、過労死とは認められないのでしょうか。

過去の判例では、質問のような例において、労働者の勤務状況報告表から算出される平均勤務時刻と、ビルの監理員の巡察実施報告書記載の退館時刻、すなわち、労働者が申告した残業時間を超えて社内に在館した場合の、申告上の残業時間と在館時間の差について、労働者が、本退館時間までの間に食事や仮眠等をしていたとしても、それらは「残業に付随して、これに必要な限りでなされたにすぎず、その大半は自己の業務を処理するために充てられていた」から、その時間差は「実際には基本的に、残業」と認められるとして、労働時間が社会通念上許容される範囲を超えた過剰なものであったと認めたものがあります(電通事件・最判平成12.3.24、労判779-13)。
従って、タイムカードを押していたかや、食事や仮眠をしていたかにかかわらず、実態にそって判断されることになりますので、内容によっては過労死と認定される可能性も十分にあると考えられます。

自らすすんで過剰な残業を行っていたような場合には、過労死とは認められないのでしょうか。また、過失相殺などで減額されることはあるのでしょうか。

上記の最高裁平成12年3月24日判決の原判決(高裁判決)は、労働者にも発症につき、一端の責任があり、精神科の病院に行くなり、会社を休むなどの合理的な行動をとっていなかったこと、労働者の両親も労働者の勤務状況、生活状況をほぼ把握しながら、これを改善するための具体的措置を採っていないことなどの諸事情を考慮すれば、損害の発生及びその拡大について、被害者側の事情も寄与しているものというべきであるとし、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して賠償額を減額しました。
これに対し、最高裁はこの高裁判決を覆し、業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法722条2項の類推適用により右労働者の心因的要因として斟酌することはできないと判示し損害全額の賠償を命じました。
また、第1審判決は、上司には労働者の長時間労働及びその健康状態の悪化を知りながら、その労働時間を軽減するための具体的措置をとらなかった過失があるとしており、この点は高裁、最高裁も是認しています。
従って、ご質問の例でも過労死と認められる可能性は十分にあると考えられますし、その場合には、最高裁の示した要件に照らして全額の請求が認められる可能性もありうるといえるでしょう。